1. 自然環境

(1) 現状と課題 | (2) 環境の目標 | (3) 取組方針

(1) 現状と課題

《杉戸町の自然の成り立ち》

本町は現在、広大な関東平野のほぼ中心に位置していますが、縄文時代前期頃(約6千年前)には江戸川沿いの台地を残してすべてが海底にあり、その後徐々に海岸線が後退して現在に至っています。

本町の地形は、江戸川沿いの台地、古利根川の自然堤防とその間の低地の3つに大きく分けられ、そのうち低地が大部分を占めています。かつて低地はヨシ原やハンノキ林に覆われ、台地や自然堤防のふちにはムクノキやエノキの林が、台地や自然堤防上にはシラカシやケヤキなど常緑樹と落葉樹が混じった林が成立していたと考えられます。古代には台地上に人が住み始め、その後自然堤防上に集落が成立しました。台地や自然堤防上は集落や畑、薪や炭をとる雑木林等に、台地や自然堤防のふちは畑地やスギ林に、そして低地は江戸川の改修などの後、広大な水田として利用されるようになりました。このように本町の自然は、人との関わりの中で成立してきたものです。

◇地形の違いによるかつての樹林タイプと伝統的な土地利用

《都市化と自然環境の変化》

◇町内で確認された動植物種数
分類
植物 シダ植物 22
種子
植物
裸子植物 9
被子植物 404
動物 哺乳類 5
鳥類 75
爬虫類 4
両生類 4
魚類 16
昆虫類 460
合計 999

本町では江戸川、古利根川、中川、倉松川を軸に、現在も田園が広がり、一見自然に恵まれているように見えます。けれども、昭和40年代後半からの都市化の進行、農業環境の基盤整備や生産様式の変化などによって、樹林や草地は減少し、河川や水路の護岸はコンクリート化され、生活排水による汚れが進むなど、自然の姿は大きく変わってきました。

《杉戸町の自然の特徴》

平成11年から12年に本町の動植物を調査した結果、75種の鳥類、460種の昆虫類などが確認できました。全体的には、確認できた野生生物の種類はあまり多くありません。これは、樹林が少なく水田が町の大部分を占めているからと考えられます。その中で、豊かな川の存在と低湿地という立地条件から、水辺や湿地の生きものは本町の特徴の1つと言えます。クリーク状の水路や沼など既になくなってしまったものも多いのですが、千石用水とそのまわりの湿地には、池や沼に生育する多様な植物が見られます。また、新たに作られた環境ではありますが、大島新田調節池は冬場にはマガモ、コガモ、ヒドリガモ、ホシハジロ等多くのカモ類を見ることができます。

◇本町の自然の特徴
自然のタイプ 内容
屋敷林 古くからある家の周りを囲むように茂っている林を「屋敷林」といいます。屋敷林は、夏の強い日差しや、冬の冷たい北風から家を守ってくれています。
江戸川沿いの雑木林 江戸川沿いには、落葉樹のコナラ、クヌギ、シデの仲間が茂る雑木林が見られます。かつて、まだガスや石油がなかった頃は、生活に必要な薪や炭を得るために人が大切に育てていましたが、現在ではその役割を終え、手入れされずに、植物が生い茂り、うす暗い林になっています。
千石用水とそのまわりの湿地 千石用水の周りの湿地には、池や沼に生育する多種多様の植物が茂っています。水深に応じて、浅いところにはマコモ、深くなるにしたがって、ヒメガマ、オオフサモ、ヒシと、植物がすみ分けて生育しているのが見られます。
大島新田調節池 大島新田調節池は、本町の中でも最も多くの冬鳥が集まるところです。マガモ、コガモ、ヒドリガモ等のカモ類、周辺のヨシ原には、オオジュリン等の小鳥類が見られ、身近なバードウォッチングの楽しめるところです
江戸川の河川敷 江戸川の河川敷には、栄養分が多くて湿った土があり、毎年梅雨時期や台風の時には水かさが増えて川幅が広がり堤防までくることがよくあります。河川敷の生きものも、その条件にあったものが生息しています。例えば、ヨシやオギなどは、土の中に茎をたくさん伸ばして、水に流されない工夫をしています。
水田 町の低地一面に水田が広がっています。これは、昔の人が長い年月をかけてヨシ原を水田に作り代えていったからです。かつての水田は、そのまわりの用水路や畔とあわせて多くの生きものの大切なすみかであり、人と生きものが共存できていました。しかし、圃場整備、農薬散布等のさまざまな影響により、かつて身近であった生きものも現在どんどん姿を消しつつあります。
身近な自然 学校の校庭、家の周りや道ばた等のいつも遊んだり通ったりしているところにも、よく見るとイヌタデ、ネジバナ、モンシロチョウ、カナヘビなど様々な種類の生きものがすんでいます。

《危機にある身近な生きもの》

◇町内で見られる絶滅のおそれのある野生生物種
植物種 動物種
ヒメシロアサザ タヌキ
オオアカウキクサ イタチ
タコノアシ アカネズミ
カンエンガヤツリ オオタカ
キンラン ノスリ
ミゾコウジュ ハヤブサ
コイヌガラシ チョウゲンボウ
カワヂシャ クイナ
ヒシ タマシギ
ミズワラビ シロチドリ
シュンラン ケリ
ミゾハコベ タゲリ
ツリガネニンジン コアジサシ
タカアザミ シラコバト
コアゼガヤツリ カワセミ
ハマスゲ トカゲ
イヌホタルイ ナマズ
メダカ
ジャコウアゲハ
※国、埼玉県、中川水系レッドリスト対象種のうち、
町内で確認できたもの

全国的に見て、水辺や農地、雑木林など身近な環境にかつて広く見られた生きものが危機的な状況にあります。本町でも、殺虫剤や除草剤の大量使用、雑木林の管理低下、農地の耕作放棄、外来種の移入とその増加などが原因で、生態系が変化してきています。

アンケートによるとホタルやカブトムシ、メダカ、タナゴなどは「かつては多く見られたが、最近ではほとんど見かけなくなった」との答えが多くなっています。そのような中で、国・県等のレッドリストに記載されている絶滅のおそれのある野生生物種のうち、植物17種、動物19種の計36種が町内で確認されています。その中には水田や池沼など水辺の生きものが多くあげられており、これらの生息生育環境の保全や回復が求められています。

《大切にしたい樹林》

◇わずかに残された雑木林

本町の樹林は、町全体で約44ha(空中写真判読による)で、町域面積の約1.5%とわずかです(H.11)。代表的な樹林は、シラカシやケヤキからなる屋敷林で、自然堤防上の集落まわりに見られます。また、河川沿いの台地にはコナラなどの雑木林が見られますが、管理されていないものが目立ちます。

しかし、そのわずかに残された樹林も、開発や相続、周辺住民からの落葉などへの苦情といった理由で現在も減少しつづけています。町では、「樹木の保存並びに奨励金の交付に関する要綱(H.7)」を制定し、樹木・樹林の保存に努めていますが、現在の指定状況は保存樹木46本、樹林3箇所4,566m2(H.12)で、指定の拡大は困難な状況です。これからは今ある樹林・樹木の大切さを認識し、地権者や周辺住民の理解・協力により保全に努めていく必要があります。

《自然体験の減少》

◇自然との関わりの程度(児童・家族(親)・教員の比較)
(児童は現在「よくしている」、家族・教員は子どもの頃「よくしていた」と回答した割合)

生活スタイルの変化により、日常生活の中で自然とふれあうことが減ってきたことも問題です。幼児期から家族や友達と自然の中で遊び、さまざまな体験をすることを通して自然の大切さを学び、倫理感や正義感が育まれると言われています。

平成11年度の町民アンケート調査結果では、町で重点的に進めてほしい環境施策として、回答者(複数回答)の44.3%が「公園・広場・緑道など自然とふれあえる場の整備・創出」と回答しており、自然とふれあえる場に対する住民の高い要望があることが分かりました。

また、小学5年生は、親が子どもだった頃に比べて自然との関わりは大幅に少なくなっています。また、町内小学校の先生の7割が家庭に望むこととして「子どもが自然とふれあう機会」をもっと作ってほしいと答えています。遊べるような野原や川が減ったことと同時に、自由に子どもを遊ばせないという大人の姿勢による部分が大きく、子どもが豊かな自然とふれあう機会を作っていくことが重要です。

◇植林分布図

◇シラカシ-ケヤキ林の様子
(上記図の番号1)

シラカシ−ケヤキ林は、冬季の季節風と夏の強い日差しから住居を守るための「屋敷林」として形成されました。また、シラカシは農具の柄、ケヤキは家屋の梁や船材に利用されました。現在でも、高さ20mを越える大木を伴った屋敷林が、主に町西部の自然堤防上を中心に見られます。

◇イヌシデ-コナラ林の様子
(上記図の番号3)

イヌシデ−コナラ林は東部の台地上にまとまってみられます。昭和30年代頃までは、農用資材や薪炭供給林として、農耕と日々の生活に不可欠の林でしたが、現在では、化石燃料・ガスの普及により、経済価値を失い放置されています。

△ ページ先頭に戻る

(2) 環境の目標

『多彩な自然に感動し 人々がふれあい生きるまち』

本町の特性である緑、田園、川との調和を大切にし、さまざまな生活の場で自然と人が豊かにふれあい、自然に学び・遊び、自然の恵みを五感に受け止めることができる自然環境が創出されています。

環境は、大気、水、土壌および生きもの等の間を物質が循環し、生態系が微妙な均衡を保ち成り立っています。町では、自然の力と人間の営みとの相互作用により形成される町の環境特性に応じて、自然環境の保全・再生、生きものの保護等が図られています。このように、自然環境に適切に働きかけ、その持続的な利用を図ることで、自然と人との間に豊かな交流が行われています。

■環境の目標指標
項目 内容 目標値※ 現況値 基準年
○樹林面積
〜残された樹林を維持する〜
林冠が幅20m以上で、およそ0.10ha以上の樹林の合計面積 44ha 44ha H.11(1999)
○緑地率
〜町の緑地の割合を高める〜
(都市公園+公共施設緑地、民間施設緑地+地域性緑地−重複面積)/町域面積 53.7% 51.1% H.12(2000)
○絶滅のおそれのある野生生物種
〜町本来の生きものを守る〜
国・県・中川水系のレッドリスト掲載種
(植物17種、動物19種)
特に設定しない 36種 H.11(1999)
○生きものとのふれあい満足度
〜過半数の満足を目指す〜
町民アンケート結果
「満足」「やや満足」との回答率
50% 33% H.11(1999)

※目標値:住民、事業者、町共通の20年後の目標値(各目標値の設定理由は以下に示す)

△ ページ先頭に戻る

(3) 取組方針

  1. 緑と水の回廊づくり
  2. ホタルやメダカなどの生息空間の保全・再生
  3. 屋敷林などの緑の保全
  4. 生活に身近な拠点でのビオトープづくり

1. 緑と水の回廊づくり

緑と水は、自然の景観を形成し、多様な動植物の生息生育空間、光合成による大気浄化、地下水涵養をはじめとする大地の物質循環など、さまざまな役割を果たしています。このような緑と水を、貴重な地域の財産として認識する場、環境を守る社会参加の場、また身近な自然と共に生きる場として、有機的につながるよう総合的かつ計画的に保全・創出し、町全体で汗して環境改善に取り組みます。

町の施策

《具体的な施策例(当面5年間で実施する施策)》

住民と事業者の行動指針

住民
  • 庭、ベランダの緑化に努める。
  • 町の生垣設置奨励補助制度を活用するなど、塀の生垣化を図る。
  • 日常生活において、進んで自然とふれあう機会を持つよう心がけ、実践する。
  • 緑地協定の締結や緑化活動への参加・呼びかけを行う。
事業者
  • 事業所の屋上や壁面、敷地の緑化に努める。
  • 住民や町が実施する緑化活動に協力する。
  • 事業所内の緑地空間の地元住民への開放を検討する。
■取組指標
項目 内容 取組主体 現況値 基準年
○緑地協定締結数 都市緑地保全法に基づき、緑地の保全または緑化する協定の締結数
住民
0件(累計) H.12(2000)
○生垣設置奨励補助金の交付件数 町の助成件数
住民
60件(累計) H.12(2000)
○施設の壁面、屋上緑化に努めている事業所の割合 事業所アンケート結果
「積極的に取り組んでいる」 「取り組んでいるがまだまだ取り組める」 との回答率
事業者 7% H.11(1999)
○敷地内、外溝部の緑化に努めている事業所の割合 同上 事業者 33% H.11(1999)

2. ホタルやメダカなどの生息空間の保全・再生

低湿地の多い本町では、水田の基盤整備や池沼の埋め立て、河川や水路の護岸工事などにより、生きものの生息生育環境の多様性が失われています。豊かな自然を計るものさしであるホタルやメダカをはじめとした生きものの生息生育環境の保全および健全な生態系の回復を図ります。

町の施策

《具体的な施策例(当面5年間で実施する施策)》

住民と事業者の行動指針

住民
  • 身近な生きものに興味を持ち、町の自然の仕組みを学ぶよう心がける。
  • 庭木や生垣などに植える樹木は、生態系に配慮し、立地条件に合った郷土の樹種を用いる。
  • 水辺の緑や生きものを守るため、除草剤の散布を抑える。
事業者
  • 事業所内の植栽樹種は、生態系に配慮し、郷土の樹種を用いる。
  • 建設工事等の実施に際しては、工事実施箇所を含めた周辺の自然環境の保全に配慮する。

3. 屋敷林などの緑の保全

屋敷林や雑木林など町内に残る樹林は、地域で育っている樹木の遺伝子を伝え、多様な野生生物が生息生育し、町の自然環境を将来にわたり観察していくことができる貴重な自然財産です。すべての主体が多くの恩恵を受けるこれらの樹林を保存、維持管理し、後世へと継承します。

町の施策

《具体的な施策例(当面5年間で実施する施策)》

住民と事業者の行動指針

住民
  • 屋敷林、雑木林等の役割や価値を知り、その保存、管理に努める(費用、労力等の提供)。
事業者
  • 樹林の保存、管理のための取組に協力する。
■取組指標
項目 内容 取組主体 現況値 基準年
既存樹林の公的担保面積 公有地化、緑地保全地区等の合計面積
住民
0m2 H.12(2000)
保存樹木・樹林 樹木本数
住民
46本 H.12(2000)
樹林箇所数 3箇所
樹林面積 4,566m2

4. 生活に身近な拠点でのビオトープづくり

学校、公園などの生活に身近な拠点において、自然の仕組みや環境問題を発見し、その解決に向けて学び、自ら行動することができる環境教育の場、自然を守り育てる体験の場づくりを行います。

町の施策

《具体的な施策例(当面5年間で実施する施策)》

住民と事業者の行動指針

住民
事業者
  • 住民や町が実施するビオトープの整備に、機材や技術・知識の提供を通して積極的に協力する。
■取組指標
項目 内容 取組主体 現況値 基準年
○小中学校のビオトープ整備数 全9校中の整備学校数 1校 H.12(2000)
○一人あたりの都市公園面積 都市公園面積/住民人口 2.5m2/人 H.12(2000)
○余暇には積極的に自然とふれあう住民の割合 町民アンケート結果
「いつもしている」 「ときどきしている」 との回答率
住民 58% H.11(1999)
○地域の緑化活動や自然保護活動に参加している住民の割合 同上 住民 15% H.11(1999)
○施設の壁面、屋上緑化に努めている事業所の割合 事業所アンケート結果
「積極的に取り組んでいる」 「取り組んでいるがまだまだ取り組める」 との回答率
事業者 7% H.11(1999)
△ ページ先頭に戻る

前のページ | 目次 | 次のページ