本文
ネギ農家の代表という仕事
2022.12.1
丸源アグリ株式会社 代表取締役
栗原 理恵さん
「しごととのこころ」は、小中高生に向けて杉戸町で活躍する様々な職業の方を紹介する情報紙です。今の職業に就くまでの道のりや仕事に対する思いなどを尋ね、実際のお話が聞ける講演の場を設けるなど、子どもたちのキャリア教育の一環として杉戸町で新しい取り組みがはじまりました。ここでは、本紙の内容をアーカイブ版として原文転載します。
「ネギ農家さんてどんなお仕事?」
4人の子どもを育てながら、丸源アグリの社長として会社を切り盛りする栗原理恵さん。
結婚するまでは農業と無縁だった栗原さんが、ネギ農家の社長になったのはどうしてなのか、お話を聞いてみました。
まずは教えて!これまでのこと
「宇宙」を身近に感じた子ども時代
小学校4 年生まで、茨城県つくば市に住んでいた栗原さん。両親と兄弟3人、祖父母という計7人の大家族で賑やかに育ちます。外遊びが大好きで、当時夢中になっていたのはローラースケート。広い空の下で思いっきり遊びながら、近くに建つ「つくばエキスポセンター」の大きなロケットを眺めては、「宇宙ってカッコイイ」とぼんやり思っていたのだそう。
【写真:左】大人になってもずっとローラースケートがしたいと思うほど、活発だった栗原さん。
【写真:右】子どものころよく眺めていた「つくばエキスポセンター」の大きなロケット/ (C) つくばエキスポセンター
身も心も鍛えた大学時代
高校卒業後は、子どもの頃から憧れていた「航空宇宙工学科」のある「防衛大学校」へと進学。家族のもとを離れ、朝起きてから夜寝るまで集団で過ごす寮生活を送りました。毎日の厳しい訓練を、栗原さんは持ち前の根性でやり抜きます。卒業論文ではロケット燃料の研究に取り組み、得意な数学をいかしてプログラミングを担当。仮説と実験のデータを比較分析し、それを何度も繰り返してまとめました。卒業後は一般企業へ就職し、そこで将来のパートナーとなる源さんと出会います。
「じゃんけん」で会社の社長に!
結婚後は、杉戸町で兼業農家をしている源さんの実家へ移住。子育てをしながら田畑を手伝い、栗原さんは、「農業って楽しい!」とよろこびを感じます。やがて、源さんのお父さんと共に本格的にネギの栽培を開始。ほどなくして、栗原さん夫婦が農家を引き継ぐことになると、思い切って会社を立ち上げようと決意。
大量のネギを作るには、広い面積と機械の導入、そして人を雇う環境が必要と考え、「丸源アグリ株式会社」を設立しました。なんとふたりは「じゃんけん」で社長を決め、勝った栗原さんが代表を引き受けることに…!
丸源アグリを始めてからのこと
1. 農業の効率化と拡大
栗原さんは自ら大きなトラクターを運転したり、導入した機械の操作を従業員に教えるなど、効率化をすすめて農業を拡大していきます。今ではサッカーコート約17 面分と同じ、全12 ヘクタールの畑と、年間約200 万本ものネギが出荷できる大規模農家へと成長しました。
【写真】もともと体を動かすのが好きだった栗原さん。子育てをしながらトラクターの運転を教えてもらい、大空の下で農業の楽しさを覚えました。
2. ネギは自然との長期戦!
収穫まで長い時間のかかるネギは、天候の影響を受けやすく、長雨は大敵!数年前には梅雨が2ヶ月も続き、広い範囲で被害を受けるという苦い経験も。しかし栗原さんは、「毎年状況が違うからこそ、達成感があって農業は飽きないんです」と、課題をクリアすることに農業のおもしろさを見出しています。
3. 持ち前の分析力を発揮
ネギは、畑が変わると同じ品種でも味が変わってしまうほど、土との関係が大切。出荷先から「畑変えた?」と指摘を受けたことも。栗原さんは、過去の状況を分析し、味が保てるよう、土づくりに工夫を重ねます。その結果、ネギ専門の卸先やレストランのシェフなど一流の職人から深い信頼を得られるように。
4. 未来への取り組み
さらに栗原さんは、持続可能な農業を証明する「GAP※」にも挑戦。栽培方法や働く環境を見直して、誰もがよろこぶ食の安全を目指しました。
認証されるまで苦労はありましたが、「子どもたちに安心でおいしいネギを提供したい」との想いから、今では杉戸町の学校給食に利用されるなど、信頼の輪がさらに広がっています。
※GAP(Good Agricultural Practices) は、「良い農業の取り組み」という意味。農業生産工程管理と呼ばれ、環境保全や食品安全、労働安全などによる、農業の持続性に向けた取り組みのことを指します。
ネギがお店に並ぶまで
種まきから10ヶ月もの時間をかけて栽培されるネギ。お店に並ぶまでに、どのように育てられているのか栗原さんに聞いてみました!
丸源アグリのあれこれ
あれこれ1:栽培しているネギは7品種!……同じように見えて様々なネギがあり、品種の名前も特徴的なものばかり。
あれこれ2:わかりやすデザイン!……お店の棚で見つけやすいように作られたロゴとパッケージデザイン。
あれこれ3:ほかにもおいしい野菜!……ネギのほかに栽培時期をずらして作る春夏の野菜も自信作です。
これから大人になって夢をカタチにするみなさんへ
今はなんでもすぐに調べられる時代。自分の気持ちにしたがって、おもしろいと感じたことや気になる分野があったら、まずは気軽に調べてみてね。
興味があることに飛び込んでみると、すべての経験が未来の自分につながっていくと実感しています!
お話のまとめ
「会社の代表と言っても、私はマネージャーみたいなもの」と話す栗原さん。複雑な経営全体を陰で支えながら、これまで身につけた忍耐力と分析力を活かし、持続可能な農業への挑戦は続きます。今回お話をうかがって、子どもの頃「宇宙ってカッコイイ」と感じていた栗原さんが、太陽という宇宙( そら) の下で農業をしている姿は、すべてつながっているように映りました。
\ 栗原さんはココにいます! /
【 丸源アグリ株式会社 】
〒345-0043 杉戸町大字下高野361-1
TEL : 0480-32-3700
▼詳しくはこちらをチェック!
丸源アグリ株式会社 Facebook<外部リンク>
※本サイトでは情報紙「しごとのこころ」で紹介された内容の一部をWEB用に編集して掲載しています。
令和4年12月発行 / 発行元:杉戸町人権・男女共同参画推進課 / 制作:mARu design room
【出張授業の様子】
町では町内を中心に活躍する働く女性を取り上げ、情報発信しています。
あわせて希望する町内の小学校に、性別にとらわれることのない進路・職業選択につなげてもらうため、しごとのこころで紹介した方による「出張授業」を開催しました。
【出張授業を受けた児童からの声】
「自分が叶えたい夢のためにチャレンジをたくさんしようと思った。」「ネギを大切にして葉の部分をゴミに捨てるなどしないで、活かすところがすてきだと思った。」「みんなと違うからやらないのではなく、性別関係なく、やりたい仕事をしたいと思った。」など前向きな感想が寄せられました。