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杉戸宿まち歩き【4】前編
宿場の中心、格式ある本陣などが軒を連ねた
「中町」前編
1616 年の江戸時代に存在した杉戸宿は、下の図のような構成で成り立っていました。ここでは「中町」の現代の様子(前編)をご紹介します。
杉戸宿の構成について詳しく知りたい方は、「杉戸宿まち歩き【1】:宿場の構成図」または「杉戸宿まち歩きブック」をご覧ください。
本陣(ほんじん)跡/ 長瀬清兵衛(ながせ・せいべえ) 邸
宿場にある宿のなかで、もっとも重要で格式高かったのが本陣です。
現在も残る立派な門を見れば、多くの有力者が駕籠を置き、出入りをしていたようすが、思い浮かばれます。
本陣には、大名や幕府役人、日光門主といった特定の身分の高い者が休憩し、休泊しました。玄関と門がまえがあることが、本陣の特徴です。
【写真】当時の門がまえと力強くそびえ立つ樹勢の松/ 2014(平成26)年撮影
※現在は寿命により松の木はありません/ ※個人宅のため公道からの見学のみ可能です
【写真:左】本陣跡の門がまえの様子/【写真:右】休泊者名を書いて掲げる宿札
本陣は、杉戸では主に長瀬家が長く務めていました。同家の当主が女性だった時期には、他の家が務めたこともありました。今もこの地で暮らす海老原氏のご先祖と考えられる市左衛門が役目を務めたこともあります。
本陣では休泊代ではなく、謝礼として支払いを受けることとなっていました。1836(天保7)年の例では、休憩200 疋(約50,000 円)、休泊300 疋(約75,000 円)でした。
【 本陣跡/ 長瀬清兵衛 邸 】
※個人宅のため敷地内と史料は一般公開をしておりません
脇本陣(わきほんじん)跡
西側:酒屋伝右衛門(さかやでんえもん)邸跡/東側:蔦屋吉兵衛(つたやきちべえ)邸跡
杉戸宿の脇本陣は本陣の両脇に一軒ずつありました。一般の旅人を泊めますが、要職の者が泊まる場合もあり、本陣に準ずる宿でした。一般の旅籠屋との格の違いとして、玄関または門構えを設けることが許されていました。時代により務める者は変わったと伝えられ、幕末期は酒屋伝右衛門と蔦屋吉兵衛だったといわれています。
現在、酒屋も蔦屋も残っておらず、子孫も他所に移動して、当時の様子を語り継ぐ者は見当たりません。
なお、前述の酒屋伝右衛門は脇本陣の他に、旅籠組合の総代を勤めたり、蔦屋吉兵衛は、本陣を長瀬家の代わりに勤めたこともあるようです。
【写真】西側の脇本陣に当たる酒屋伝右衛門邸跡(写真:左)と東側の蔦屋吉兵衛邸跡の現代の様子(写真:右)/ 2014(平成26) 年撮影
中町プラス+
■三村や酒店 跡
宿場通りに並ぶ「三村や酒店」は、江戸期から続いた商店でした。
店主によれば、店は150 年ほど前に、隣にある清地村から当地へ移転してきたとのことです。改修前の店舗は、写真のような古民家で商家のたたずまいを今に伝えていました。
【写真】1989(平成元)年頃の外観
【 三村や酒店 跡 】
※現在店舗は閉店しています
愛宕神社(あたごじんじゃ)
愛宕神社は杉戸宿の鎮守の1つです。大火の経験のある杉戸では、火伏せの神としても深く信仰されています。
古くからの言い伝えで、愛宕神社の成り立ちは1705(宝永2)年までさかのぼります。この年の大水の際、愛宕様の像が当地にあった香取神社の大銀杏の元に流れてきたそうです。この像が合祀され「愛宕香取合社」となりました。そして、明治の初めに社号を「愛宕神社」に改められました。明治政府による神仏分離令までは、宝性院(「横町」参照)が神社の管理をする寺院「別当寺」でした。
現在境内にある大銀杏の樹勢は、災害の影響もあり良好とはとてもいえません。それでも、地域の人びとに見守られながら徐々に力を戻してきました。この大樹は、前述にある、愛宕様が流れ着いた「大銀杏」であるとの推測があります。300 年以上前すでに大銀杏といわれていたのであれば、当然ながら樹齢300 歳をはるかに上回ることになります。
【 愛宕神社 】
所在地:杉戸町杉戸4-4
荒神社(こうじんしゃ)/大天狗神(おおてんぐしん)
荒神社は、鎮守・愛宕神社境内の築山(つきやま)から地域を見守っています。
神社は氏子である海老原氏が守っており、神社の縁起書が社殿(しゃでん)内に納められています。同書では、荒神社は1376(永和2)年に坂東(ばんどう:関東の古称)の武士が、古利根川をさかのぼってきた際に風波が荒んだため、ここに舟を着け、守り本尊を祀ったと伝えられます。
1598(慶長3)年に御嶽山(おんたけさん)が合祀(ごうし)され、大天狗神が建ち、1685(貞享2)年に稲荷神社も合祀されたとされています。
【写真:左】「荒神社」祭神は三面六臂(さんめんろっぴ)の三宝神(さんぽうじん)
【写真:中】「大天狗神」社殿の中には神社の縁起書が納められています
【写真:右】荒神社の隣には稲荷神社が並んでいます
【 荒神社/ 大天狗神 】
所在地:杉戸町杉戸4-4
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※本ポケットブックは、杉戸町観光案内所、杉戸町観光協会、杉戸町役場産業振興課の窓口等にて配布しております。
※数に限りがございますので、配布はお一人様1 冊までとさせていただきます。ご了承ください。