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余暇も買い物も近所で事足りる、のほほんとした時間の流れ
2024.8.14
茶のいとや
五代目店主:鈴木慎人(すずき・まこと)さん/妻:倫子(のりこ)さん
杉戸町清地3丁目にある「茶のいとや」は、創業明治10年の老舗茶屋。静岡茶を中心に、狭山茶、鹿児島茶、宇治茶、八女茶、嬉野茶など各産地のお茶を取り扱っており、好みに合わせた茶葉のブレンドにも応じています。五代目の鈴木慎人さん、倫子さんご夫妻に、住民として、店の経営者として、両側面から杉戸町の魅力を語っていただきました。
Q. 「茶のいとや」はどんな店ですか?
慎人さん:
初代店主の晴蔵(はるぞう)が明治10年に移り住んで、お茶の行商を始めたのが「いとや」の始まりだといわれています。当時、百間村(もんまむら)と須賀村(すかむら)(両村が合併して現在は宮代町)はお茶の産地だったんです。現在の場所に店を構えたのは三代目のときです。
【写真】昭和37年 当時の軒先の様子
【写真】昭和39年 店舗の建て直しと共に屋号を「茶のいとや」とした
僕自身は、学生のころはインテリアデザインに興味があったりして、茶屋の経営とは違うことをやろうとしていました。でも、父が早くに亡くなってしまって。そのころは祖父が店を経営していたので、祖父にちょっとずつ仕事を習って、今に至ります。
老舗の店として、丁寧に仕事をすること、それから昔から来てくれるお客さんのためにも味を変えないように気をつけています。お茶の味は、その年によっても少しずつ違いますし、産地や蒸し方でも変わるんです。なので、どの産地のどのランクのお茶を仕入れて、どう混ぜたらこの味になるか、みたいな作業に一番気を使いますね。
お茶の世界には、茶葉の選定や合組(ごうぐみ = 調合)をしてくれる茶師という人たちがいて、最高位の「茶師十段」を取得している人は全国に20人くらいしかいません。その十段をとった茶師の人に、うちの冷茶をつくってもらっています。祖父の時代から付き合いがある人で、その人が20代のときにうちのおじいさんからお茶のことを教えてもらったそうです。そうやって「いとや」らしい味と品質のお茶をつくり続けているんです。
Q. 店を継いで変わったこと・変えたことは?
慎人さん:
ここ最近はちょっと自分の色も出そうと思って、「のほほん茶」というお茶を創りました。長年通ってくれているお客さんで濃い深蒸し茶が好きな方がいるんですけど、のほほん茶はその好みの反対にあたる、香りのある薄いお茶です。こういうお茶も実は美味しいんですよ、ということを広めたくてつくりました。
店内に併設している「のほほん茶屋」という喫茶処にもメニューとして出したところ、徐々に売れるようになりました。濃い緑色をした深蒸し茶に対して、のほほん茶は透き通った黄緑色です。色は濃く出ないけれど、香りと旨みが出ています。
Q. 杉戸町の住み心地はどうですか?
慎人さん:
生まれも育ちも杉戸町で、ずーっとこの町にいるので……居心地がいいですね。僕が小さかった頃は、実家が酪農をやっていたんですよ。よくその牧場で遊んでいました。
この町を出たいとか、東京に憧れたとか、そういうのはないですね。東京にはもう10年以上行ってないんじゃないかな。買い物も近所で事足りるので、全然遠出しないし。
倫子さん:
私は中学を卒業するまで草加市に、卒業してから結婚するまでは越谷市にいました。杉戸町に引っ越してくる前はマンションに住んでいたんですが、マンションって隣同士の距離が近いようでいて、そうでもない。それに比べると、杉戸町は近所の人たちの距離が近いんです。でも、わずらわしいような距離感ではなくて、お店をやっているからかもしれないですが、常連さんがいるとほっとする近さなんです。
それから、杉戸町には高い建物がないし、時間の流れがゆっくりしていて良いですね。ふと、庭を見たりする時間があって。そうそう、この間トウモロコシができたんですよ。飼っているインコの餌をまいたら、そこから生えてきちゃったんです。
慎人さん:
静かなので、散歩するにもいいんですよ。お店の営業が終わった後に、古利根川の川辺をよく二人で散歩しています。
倫子さん:
ゆったりしてるけど、そこまで田舎過ぎず、生活するのに全然困らない。心地いいバランスですね。
Q. お気に入りの場所や、よく行く場所は?
倫子さん:
道の駅アグリパークゆめすぎとの「あいガモ池」ですね。外周を歩くと気持ちいいんです。あとは、野口測量さんの事務所前の桜。桜が咲く季節には、夜になるとライトアップされていて綺麗です。お店のお客さんにも「どこかいい場所ない?」って聞かれたらおすすめしています。
慎人さん:
古利根川流灯まつりも綺麗だよね。今は河川敷が歩けるようになっていて、昔と全然違うなと思いました。私が小学生のころは、川が汚くても構わずバシャバシャ入っていって遊んでいたんですけど(笑)。
慎人さん:
倉松公園にもよく行きますね。二人ともフットサルが趣味なので、ボールを持って。結構、穴場なんですよ。
【写真】左から
「あいガモ池」欄干に並ぶ愛らしい鴨たち(道の駅アグリパークゆめすぎと内) /「倉松公園」シンボルのモニュメントと園内の桜並木/「古利根川流灯まつり」古利根川の夜を彩る250基もの大きな灯籠は圧巻
Q. これからの杉戸町に期待することは?
倫子さん:
私は杉戸町の歴史にそこまで詳しいわけではないんですけど、今このままの杉戸町がちょうどいいです。発展し過ぎなくていい、と思っています。
慎人さん:
期待することや理想はあんまりなくて……みんなと仲良く、健康に暮らしていければいいなと思っています。なんというか、野望がないんです。喫茶処の「のほほん」という店名は僕がつけたんですが、店だけじゃなくて、町自体がのほほんとできる場所だといいですよね。
【写真】令和6年撮影:現在の店舗
【写真】店内の喫茶スペース「のほほん茶屋」では、抹茶パフェが一番人気。夏にはかき氷も好評で多くのお客様が訪れます
【写真】店内のところどころにはご近所さんからいただいたという手作りの作品が見られ、お茶のいとやが地域で愛されてきたのが見てとれます。また、小上がりには黒電話が置かれていたり、引き出しを開けると昭和の懐かしいレコードジャケットが隠れているなど、店主のさりげないユーモアを感じます。
【 茶のいとや・喫茶処のほほん 】
所在地: 〒345-0025 埼玉県北葛飾郡杉戸町清地3丁目1−14
電話:0480-34-1108
営業時間:10時00分~17時30分(ラストオーダー 17時00分)
定休日:日曜日/7月~9月は月曜日
店舗ホームページ:https://r.goope.jp/sr-11-114641s0008 <外部リンク>
【担当】総合政策課 政策行革担当