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37歳で未知の世界へ。自らの手で『食』を育てる新規就農への道

ページID:0018087 更新日:2025年3月7日更新 印刷ページ表示

2024.12.15


 

秋山さん

ユー・ファーム(You-Farm)

代表:秋山 勉 (あきやま・つとむ)さん

 

大人の背丈ほどのキュウリの苗が何列も奥まで続いているビニールハウス。代表を務める秋山勉さんは、夫婦二人三脚で農業にチャレンジしている新規就農者です。さいたま市岩槻区出身で、37歳まで野菜を育てたことがなかったという秋山さんが、杉戸町で農業者になると決意した想いについてお話を伺いました。

 

 

Q. どうして農業者​を目指すことになったのですか?

大前提として『食』に興味を持ったというのが大きいです。

この仕事を始めて10年ほどになりますが、農業を始める前は調理師の専門学校で学校運営の業務をするサラリーマンをしていました。かつての僕は「お腹が空いたら何でもいいや」という感じで、カップラーメンなんかも日常的に食べるタイプだったんですよ。そんな中、職場で学生が調理した料理を試食させてもらう機会がたびたびあり、食材が変わるだけでおいしさが全然違うことを知ったんです。質の良い食事に触れるようになってからは『食』に対する意識が大きく変わりましたね。

きゅうりの圃場​​​​

Q. 新規就農者として杉戸町を選んだきっかけを教えてください。

もともとは、僕の叔父が杉戸町で農家をしていました。8月のある日、その叔父が作業中に突然倒れて亡くなってしまったんです。他に担い手がいなかったので、畑にはまだ若いキュウリの苗が残されたまま。それを見た僕は、「やり方はわからないけど、このまま閉めてしまうのはもったいない…」丹精込めて植えた叔父の姿を想うとやるせない気持ちになったんです。


きゅうりの花

そんな様子を見かねて、叔父と同じキュウリ農家の先輩方が「あと1ヶ月ほどで全部収穫できる。手伝えるならやり方を教えてあげるよ」と声をかけてくれました。

幸いにも、当時幼稚園の先生をしていた妻と教育機関に勤めていた僕は、ちょうど夏休み中だったので、迷わず農作業をすることにしたんです。自分の畑そっちのけで手伝いに来てくれた先輩方のおかげで、すべてのキュウリを収穫し終えることができました。

そんな心意気に感動した僕は「農業もいいかもしれない!」と思って、農家の先輩に相談してみたんです。すると「やめたほうがいい」ってはっきり言われちゃいました(笑)。会社に勤めていたほうがよっぽどいいってね。

収穫したきゅうり

しばらく心残りだった僕に、「埼玉県農林公社」で初心者向けの農業研修がある、という情報を妻が見つけてくれました。僕はさっそく受講することにしたんです。37歳にして初めて自ら野菜を栽培し、1年間の課程を修了したところで、もう一度先輩に会いに行ってみました。すると「そこまでやる気があるのなら」と師匠として指南してくれることを承諾してくれたのです。

剪定作業

それから農業を始めるにあたって「明日の農業担い手育成杉戸塾」(希望地で確実に就農できるよう支援する埼玉県独自の制度)などの研修も受講。数年をかけてようやく新規就農者として農業をスタートさせることができました。


※明日の農業担い手育成杉戸塾 https://www.town.sugito.lg.jp/page/1462.html

※埼玉県農林公社 http://sainourin.or.jp/seinen/training.html<外部リンク>

 

Q. 生産者の思いを知ってもらう工夫は何かありますか?

始めたばかりの頃は、師匠からキュウリをメインに指導していただきました。キュウリは1年中栽培できるので、なんとかスーパーに出荷できるようになったのですが、ベテランの先輩たちと一緒に並べるとレベルに差があり、僕の商品はとうてい敵わないんです。品質に自信はあっても、それをお客さんに伝えるにはどうしたらいいのかわからない...。

作業風景

作業風景

悩んでいたころ、町内で「川市」という魚屋を営んでいた家族から、空き店舗の活用について、僕の妻に話がありました。僕らはその店舗を借り、新規就農仲間の協力も得て、週に1度収穫した野菜をPRする「ぷちポタジェ」という野菜の直接販売を始めました。野菜の詳しい説明や食べ方のアドバイスなどを交えてお客さんに接していると、皆さんとても喜んでくれるんです。後日、僕たちの商品が置いてあるスーパーまでわざわざ足を運んでくれたと知った時は、うれしかったですね。

ぷちポタジェの様子​​​【写真】野菜販売所「ぷちポタジェ」の様子(https://you-farm.com/shop.html<外部リンク> )

 

 

Q. 農業者としてのやりがいや目指していることはなんですか?

自分が一から育てた野菜なので、安心して食べてもらえると自信を持って勧められることですね。

「ぷちポタジェ」では次第に新規就農仲間だけでなく、いろいろな農家さんの野菜も販売するようになりました。さらに、コロナ禍をきっかけに移動販売も始めました。

ココティすぎとでの販売風景​【写真】「ココティすぎと」内や杉戸町役場で移動販売する秋山さん夫妻。施設を訪れた人たちが立ち止まって、採りたての新鮮な野菜に集まってきます

 

さらに、農家同士でもっと交流ができるといいなと思っています。地域で農家をしてきた方たちと、新規就農者がお互いに知り合う機会が少ないと孤立してしまうので、直売の機会を通じていろいろな農家の方とつながり続けたいですね。そしてお互いの理解を深められたらいいなと思っています。

 

Q. 杉戸町と関わってみて感じたことをお聞かせください。

とにかく人が素晴らしいです。なかでもご高齢の皆さんがとても元気だということです。「ぷちポタジェ」を開いたり地域を回ると、みなさんすごく優しくて親身になってくれるんですよ。いい意味で田舎なのかな(笑)。僕が生まれ育った時代から変わらないというか、おおらかさが残っている感じがします。そうやって僕らを気にかけてくれるので、ますます地域に知り合いが増えて嬉しいですね。

ハウス内での作業

時代とともに、昔ながらのお店を閉めてしまう商店が増えていますが、元気な皆さんからすごいポテンシャルを感じるので、僕はあまり悲観していないんです。高齢者のパワーと若者のパワーがうまく混ざると、いい起爆剤になって、このまちはもっとおもしろいことになるんじゃないかって。元気な先輩方には、どんどん表舞台に出てもらって、地域にそのパワーを分けて欲しいですね。

 

Q. これからやってみたいことはありますか?

子どもたちが野菜に興味を持てるように関わっていきたいですね。嫌いな野菜も自分で収穫すると食べられるようになる、というのを聞いたことがあって。スーパーに並んでいる野菜やお弁当のおかずだけを見ていると、畑の野菜に直接触れる機会ってほとんどないと思うんです。だから実際に野菜が成長しているところを見てもらい、自分の手で収穫して身近に感じてもらえたら嬉しいです。

きゅうり

以前、幼稚園児たちにキュウリの収穫体験をしてもらったところ、採ったキュウリにその場でかじりついた子がいたんですよ。その姿を見たとき、もしかしたら嫌いな野菜を克服する手助けができるかもしれないと感じたんです。

収穫する秋山さん

収穫しただけなのに、自分にとってその野菜が特別なひとつになり、親しみを覚える。

『食べること』や『野菜を作ること』ひいては農業に対して興味が広がってくれたらいいなって思います。そのうち採れたての野菜を使った「農家レストラン」を畑の近くにつくれたら理想的ですね。一緒にやってくれる人がいたらですけど(笑)。

秋山さん夫妻​【写真】取材中もずっと隣で微笑む妻の央子(ひろこ)さん。控えめに「私のことはいいわよ」と言いながらなんとかカメラに収まってくれました。サラリーマン時代から勉さんをずっと支えてきた陰の立役者

 

秋山さん 思いを記入

 

このまちには きもち がある


【ユー・ファーム】(You-Farm)

 

所在地:埼玉県北葛飾郡杉戸町大塚270

電話: 090-3691-3751

受付時間:平日10時00分〜17時00分

https://you-farm.com<外部リンク> 


 

【担当】総合政策課 政策行革担当


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